12月 232013
 

産経新聞 によると。

 大阪市中央区西心斎橋のビジネスホテルの一室。あやしい明かりに誘われ入り口の扉を開け、中に入った。独特の青白い照明のもと、奥には「人魚」が横たわっていた。顔は派手なメークを施しどこか宇宙人っぽいが、瞬きひとつせず目は天井を向いていた。すわっ、「人形」か。と…。部屋にいた子供が「イルちゃん」と呼びかけると、にこっと笑った。「え!人間?」。実は「意外性」に満ち満ちたコスプレアートなのであった。(北村博子)

 ■ホテルの56室「異空間に」

 11月23、24の両日、ニューオーサカホテル心斎橋で開かれた客室を使って作品を表現するアートイベント「ボダイジュエキスポ」。昨年に続き2回目の開催だ。大阪キタでカフェギャラリーを経営する仲村伊太利さん(35)が「アートを身近に感じてもらえるきっかけになれば」と企画した。ホテル全体の約半数となる56の客室を借り切った。

 使ったのは15~20平方メートルのシングル、セミダブル、ダブル、ツインの4タイプ。大阪出身者らプロ、アマチュアのアーティストが、絵画、写真、造形物などの作品を部屋に飾り、自由に模様替えした空間を披露。驚くような展示も多かったが、事前に展示内容は知らせずに、訪れてみて初めてその「異空間」ぶりがわかるように仕組まれ、来場者を釘付けにした。

 例えば、「人魚」のほかにも、ベッドに、ピンクのシーツにくるまったひげ面の男と、ちりちりパーマの女の人形2体を並べ、「へたうま」的な人間の絵をいくつも飾った部屋。指に唇をあて意味深長な表情でこちらを向く巨大な顔の女性の絵があるかと思えば、バスルームに行くと同じ女性が横向きの裸になった絵が…。黒や白など色、大きさ、表情とも各種各様のネコの置物が大量に配置された部屋もあった。

 いずれも訪れれば、「何を意味しているのか」と、ちょっと考えたくなる。いや、考えさせられるように仕向けていた。

 ■コスプレ集団に声かけ

 そんないくつもの空間の中でも、印象が強烈だったのが、人形とも人間ともつかない「人魚」がたたずむシングルの部屋だった。

 しゃれた長髪とあごひげの作者、「ハモニズム」さんが部屋に陣取っていた。本名は小島和人さん(31)=大阪市北区=という。

 人形ではないのか。訪れた子供たちが興味津々の表情で、天井を向いた人魚を見つめる中、小島さんは人魚を指し「『ill(イル)ちゃん』と呼んでみて」と声をかけた。子供たちがそう言葉を発すると、人魚は子供たちのほうを向きにこっと笑った。子供たちは愕然とした表情を浮かべた。

 小島さんはこのコスプレの仕掛けについて「ねらい通りの反応に満足しました。一つの事象に対してあれこれ考える楽しさを知ってほしくて」といたずらっぽく笑った。「人と関わることや人を驚かせるのが好き」という。

 この部屋のテーマは「地球へやってきた宇宙の人魚~生命誕生」。青白い照明にしたのは、宇宙から見たとき青く輝く地球をイメージしたためだ。

 「ill(イル)ちゃん」の役を務めたのは実は、名古屋で開催されたコスチュームプレー(コスプレ)世界大会で日本代表として出場した経験があるコスプレ集団「コスパフォ」の女性メンバー。名前は愛華しぐまさんだ。小島さんが今回協力を求め、人魚役に抜擢(ばってき)された。そしてド派手なメークをして、うろこが大量についた衣装を着て、動かない人魚を演じた。

 小島さんがコスプレを取り入れた作品に取り組む動機は、こうだ。

 「今や日本文化の一つとして世界からも注目を集めるコスプレですが、一過性のブームで終わるのではもったいない。アートへと進化させることで新たなる価値を生み出したい」

 ■本業はデザイナー

 本業は大阪市内の会社に勤めるデザイナーで、新築マンションのショールームやビルの看板などを主に手がける。工事現場などで見かける「三角コーン」に、季節のフルーツなどさまざまなイラストを彩った「デザインパイロン」を生み出すなど、持ち前のセンスを生かした商品開発に挑戦している。

 一方、こうした仕事とともに、アートにも力を入れ「ハモニズム」という作家名で活動。職場と表現活動の場を両立し、それぞれから得られる刺激と技術を生かし、相乗効果を発揮しているという。

 来年の春には、派手なメークと衣装で歌や踊りを披露する「ドラァグクイーン」のコスプレアートに挑戦する予定だ。ドラァグクイーンは本来、女性らしさを強調して女装した男性を指すが、女性があえてこのスタイルに挑戦し新たな趣向を加味する、という「意外性」があるアイデアである。

 さらに将来は100体規模のコスプレアート作品展も考えている。コスプレ姿の人間と、ろう人形を混然一体とさせた幻惑的な空間をつくり、見る人を考えさせ惑わせるのだ。

 「違和感とインパクトを融合させた作品づくり」。それが自らのアートの信条だ。

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